栃木県で体験した東日本大震災
2011年3月11日。一生忘れる事のない体験となって心に刻まれています。
まだ小学校低学年だった娘を学校に迎えに行き、その帰りの車の中で揺れを感じました。
パンクかと思い車を路肩へ…
タイヤを確認しようと車から降りると地面がまるで粘土のようにぐにゃぐにゃ。波打つように動いている…!
木や電柱が左右に激しく揺れて…。地震!?
こんな激しい揺れは体験したことがないので状況が呑み込めず…
「ママ怖いよ!車に戻って!!」
娘の叫び声でハッとする。急いで車に戻り揺れが落ち着くのを待った。強く握り合う娘と私の手。
何分揺れていたのだろう…。 とても長く感じた。
揺れが収まりゆっくり車を走らせる…。人はいない。木々に囲まれた坂道を上がっていくと道路が割れ、水道管が破裂している。
何が起きてるの…
自宅まであと300メートルぐらい。上り坂で自宅はまだ見えない。周りを見渡すが建物などに異常は感じなかった。(今思うと見えていなかっただけだと思う)
自宅が見えてきた。しっかり建っている我が家を見て少し安心した。
「大丈夫だねおうち!」娘に声を掛けた。
車から降りて玄関に向かうと娘が叫ぶ。

熊の置物の首が真っ二つに。相当ショックだったらしく泣き叫ぶ娘。
「大丈夫!熊さんはなおせるから!」抱きしめながら安心させようと必死だった。
とにかくうちの中へ…。玄関を開けると…。唖然。
荷物が散乱。足の踏み場がない。
どこからこんな大量の荷物が出てきたの!?というくらい散乱していた。
頭が回らない…。
状況確認…しなくちゃ…。
お風呂場のドアが開かない。トイレが水浸し。家具の位置がかなりずれている…。
立ち尽くす私と娘。
呆然…。
心拍数が上がって震えが止まらない。落ち着け…落ち着け…と自分に言い聞かせた。
とにかく娘だけは守らないと。
帽子をかぶったままにさせ、安全そうな部屋に待機させゲームをさせた。(どんな行動が正しいのか分かりませんでした…)
何をしていいかわからない…
片付け?どこから?…庭は?
…家族は…
たまたま家族は県外に行っていた。…電話が繋がらない…。募る不安。
外に出て見渡すと少しずつ状況が見えてきた。タイヤの散乱。倒れているガスボンベ。近所の瓦屋根の破損。…初めて何か大変な事が起きてる…と思った。
自宅前のお婆ちゃんが靴下のまま道路でしゃがみ込んでいた。
家の家具につぶされそうになり飛び出したという…。お婆ちゃんの肩を抱き寄せしばらく一緒にしゃがみ込んでいた。そしてまた激しい揺れ。木々の揺れる音が響き渡る。杉の木から花粉が舞い散る。私達以外誰もいない…。
「お爺ちゃん早く帰ってくるといいね…」
「こんな時に限って誰もいないなんてね」とお婆ちゃんが不安そうに言った。この時のお婆ちゃんの泣き出しそうな表情は忘れない。
そして「何かあったら呼んでね」と声を掛け家に戻った。
水浸しになった床を拭きながら何度も家族に連絡を取るが繋がらない。情けないが娘の方がしっかりしていたと思う…。娘に「大丈夫?」と声を掛けるのは私が不安だったから。「大丈夫!」と元気な返事をしてくれる娘にほっとする。
数時間後家族と連絡が取れる
「良かったぁ…無事だったぁ…」
「人っ子一人いない」道路を走っていると言った。まだ県外だけど崩れた家がたくさんあると。
この辺だけじゃないの!?
この時はまさかこんな大震災だなんて思いもしませんでした。
そして家族と再会。訪れる暗闇…。
家族が帰って来たのは夕暮れ前。

娘と手を繋いで見た風景を忘れない
日が沈む…。
停電したまま。訪れようとしている暗闇。水も止まっている。
街はどうなっているんだろう。コンビニに水や食料を買いに行ってみたが…。
明かり一つない道路。信号機が停止。 人であふれかえるコンビニ。
えー!?すごい人!!真っ暗闇の中、懐中電灯のみで店を営業するコンビニ。商品はほとんどない。それでもなんとかある食料を手に取りレジに並んだ。電卓で計算する店員さん…。足元には割れた酒類の瓶。お酒の匂いが漂っている。 みんなパニックになっているように見えた。
皮肉にも星空が綺麗だった
父のキャンピングカーが救いだった。
いつもは家から漏れる明かりと電燈で明るい街が黒一色の世界。
不思議な感覚だった。異世界にいるような感覚。

真っ暗闇の中空を見上げると星が瞬いていた。…きれいと思った。心が不安でいっぱいの中、一瞬の救いだったかもしれない。
そして知る現実
マグニチュード9.0。最大震度7。福島第一原子力発電所事故。
辛く悲しい現実。津波でこんなに亡くなってしまったなんて…。テレビで映像を見た時は現実のものとは思えなかった。
家の壁にヒビ、基礎に亀裂 。家のゆがみ。私の被害なんてちっぽけだった。
私の住んでいる所は震度5強でした。
震災から9年。東北各地で虹が見られたという…。
14時46分。忘れられない時刻です。
東日本大震災によって亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。
そして今も辛い日々を過ごしている方々がたくさんいる…。
少しずつ、一歩ずつ前に進めます様に。
